喘息治療の目的
喘息は、患者さんによって原因が異なり、年齢や季節、時間帯、生活環境などによって症状が大きく変化する病気です。一人ひとりに合わせた適切な治療で、症状を抑えるとともに急な発作を防ぎ、喘息のない人と変わらない日常生活が送れるようになることを目指します。
昭和大学医学部 内科学講座
呼吸器・アレルギー内科学部門
主任教授
喘息はどのような病気?
喘息は、ほこりやたばこ、ストレスなどのわずかな刺激で、咳(せき)や痰(たん)、息苦しさなど、さまざまな症状があらわれる病気です。こうした症状は、気道に慢性の炎症があるために起こります。
喘息の症状
喘息の症状には、主に以下のような特徴があります1)2)3)。
ぜん鳴やはげしい咳
息をするたびに「ヒューヒュー、ゼイゼイ」という音(ぜん鳴)がしたり、はげしい咳が起きます。また、息切れや胸が苦しいなどの症状がみられます。
夜間や早朝にかけて
症状が悪化する
喘息の発作は、夜間から早朝にかけて起こりやすい特徴があります。それは、自律神経のバランスや明け方の冷え込みによって、気管や気管支が狭くなるためです。咳で苦しいために、眠れないこともあります。
さまざまな原因を
きっかけに引き起こされる
喘息は、かぜ・冷気・たばこや線香などの煙・強い香り・大気汚染・天候による温度や湿度の変化・運動・ストレス・ほこりやカビ・ペットの毛・花粉など、さまざまな原因がきっかけとなり起こります。
気道の炎症とは?
ウイルスや細菌などの異物が体内に入ってきた時、免疫を司る細胞はそれらを排除しようとはたらきを強め、炎症が起きます。喘息の場合、症状がない時でも気道に炎症が続いており(慢性炎症)、気道の粘膜がむくんだり気道の表面をおおう上皮細胞がはがれやすくなっていたりと、刺激に対して常に過敏な状態になっています。そのため、ささいな刺激を受けただけでも一気に炎症を起こし、気道が収縮して狭くなり、喘息の発作が起こります3)。
喘息治療の目的
喘息治療の目標は、「喘息のない人と変わらない日常生活を送れるようになること」です1)。喘息は常に気道に慢性的な炎症が起こっている状態のため、この炎症を抑え、気道を広げて症状があらわれないように治療します。喘息のタイプや症状を引き起こしやすい原因などによって一人ひとりに合った治療法を選ぶこと、そして症状があらわれていない時でも治療を続けることが大切です。
気道の炎症を抑える
喘息の症状が起きるのは、気道に慢性的な炎症があるためです。まずは、炎症を起こす原因をできるだけ避け、または取り除きます。そして適切な薬を使って炎症をしずめ、喘息のない人の呼吸機能にできる限り近い状態をめざします。症状があらわれていない時も薬はやめずに続け、普段から炎症を抑えることが治療の重要なポイントです1)。
気道を広げる
一般的に喘息の治療では、気道の炎症を抑えるとともに、気道を広げて症状があらわれないようにする薬を使います1)。日常的に発作を防ぐとともに、もし発作が起きた時でも薬によって気道を広げ、症状を早くしずめて呼吸しやすくします。
喘息のない人と変わらない生活を送る
喘息の発作がたびたび起きる状態は、心身が苦しいのはもちろん、体調不良や通院などで仕事や家事、学校を休まなければならないなど、日常生活に支障をおよぼします。薬による適切な治療で、発作を起こさず、喘息のない人と変わらない生活を送ることが最大の目標です3)。
喘息は治る?
喘息は治る、治らない、どちらでしょうか。小児の場合、1~2歳で発症することがもっとも多く、13歳頃までに約70%の人が寛解(病気が改善して症状がほとんど出ない状態)するといわれています2)3)。一方成人の場合、小児期の喘息からの移行・または再発に加え、40~50代で初めて発症するケースも目立ちます。治りにくく、重症化しやすいのが特徴です3)。しかし、症状があらわれていない時でも治療(自己管理)を続けることで、炎症を抑えて発作を防ぐことができます。患者さんの状態によっては薬を減らすこともできます。
【出典】
1)一般社団法人日本アレルギー学会 喘息ガイドライン専門部会監修:喘息予防・管理ガイドライン2021,協和企画,2021
2)足立満 著:ぜんそく 正しい治療がわかる本,法研,2010
3)足立満 著:ウルトラ図解 ぜんそく,法研,2015