ステロイド薬について
ステロイド薬は、副腎から分泌される副腎皮質ホルモンを化学的に合成した薬です。喘息の治療では、吸入ステロイド薬、経口ステロイド薬、ステロイド注射薬の3種類が使われます1)2)。
中でも吸入ステロイド薬は、喘息の治療においてもっとも効果的な抗炎症薬であり、治療の基本薬となっています。
昭和大学医学部 内科学講座
呼吸器・アレルギー内科学部門
主任教授
吸入薬(吸入ステロイド薬)
ステロイド薬のはたらき
ステロイド薬は炎症を抑えるさまざまな作用をもった薬剤です。喘息では、気道の炎症を起こす細胞のはたらきを抑えたり、炎症によって生じる気道の組織の変化を抑えることによって、気道の炎症をしずめます。
Barnes PJ, et al. Ann Intern Med 2003;139:359-370より改変
※1:好酸球…白血球の一種。アレルギー性の炎症が起きた際に増えます。
※2:T細胞…白血球の一種。炎症を引き起こすサイトカインという物質を作るはたらきなどがあります。
※3:マスト細胞…白血球の一種。肥満細胞ともいいます。ヒスタミンなどのアレルギー反応を起こす物質を作ります。
※4:気道上皮…気道の表面の細胞で、外部からの異物の侵入を防ぎ、サイトカインを作ります。
※5:気道平滑筋…気道を形作っている筋肉で、サイトカインを作ります。
※6:分泌腺…痰のもととなる粘液を分泌します。
喘息の長期管理薬の基本として用いられる吸入薬(吸入ステロイド薬)には、次のはたらきがあることがわかっています1)3)。
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喘息症状の軽減
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呼吸機能の改善
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気道の炎症の抑制
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発作の回数や
程度の改善
吸入することで、効かせたい部位(気道)に限定的に直接薬を届けることができるので、飲み薬や注射薬に比べて少ない量で有効にはたらきます。
近年、喘息で亡くなる方は年々減少していますが、この背景には吸入ステロイド薬が広く使われるようになったことが関係しているといわれています。
喘息死の推移/厚生労働省人口動態統計
厚生労働省 令和3年(2021), 令和2年(2020) 人口動態統計
吸入デバイスのタイプ
足立満ほか5名:ぜんそく・気管支炎・COPD 呼吸器とアレルギーの名医が教える最高の治し方大全,文響社,2021
注射薬(ステロイド注射薬)
発作があった時に病院や医院で使用されることがあります1)。
【出典】
1)一般社団法人日本アレルギー学会 喘息ガイドライン専門部会監修:喘息予防・管理ガイドライン2021,協和企画,2021
2)足立満 著:ウルトラ図解 ぜんそく,法研,2015
3)足立満ほか5名:ぜんそく・気管支炎・COPD 呼吸器とアレルギーの名医が教える最高の治し方大全,文響社,2021