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喘息のステップ治療

喘息治療は、4つのステップ(段階)に分かれています。患者さんの症状や重症度に応じて、最適な治療ステップが選ばれ、その後は効果に応じてステップを変更していきます。

監修

昭和大学医学部 内科学講座
呼吸器・アレルギー内科学部門
主任教授

相良 博典 先生
監修の相良先生写真

4つの治療ステップ

4段階に分かれた治療ステップの内容を紹介します1)2)。長期管理薬の吸入ステロイド薬を基本に、重症度に合わせて他の薬を組み合わせていく治療法です。

治療ステップのイメージ
治療ステップのイメージ

治療ステップ 1

軽い喘息症状がごくまれ(月1回未満が目安)にしかあらわれない患者さんに限り、喘息症状がある時に短時間作用性吸入β2刺激薬を使用します。症状が月1回以上の患者さんの場合、長期管理薬として低用量の吸入ステロイド薬を使いますが、これを使用できない場合はロイコトリエン受容体拮抗薬やテオフィリン徐放製剤を用います。

治療ステップ 2

低用量の吸入ステロイド薬と、長時間作用性β2刺激薬を使用します。これらの配合剤の代わりに、中用量の吸入ステロイド薬を単体で使用するか、長時間作用性β2刺激薬の代わりに長時間作用性抗コリン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤のいずれかを用いても良いとされています。

治療ステップ 3

中~高用量の吸入ステロイド薬と、長時間作用性β2刺激薬を併用します。これで十分でない場合は、長時間作用性抗コリン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤のいずれかを併用します。医師の判断で、治療ステップ3から使用できる抗体医薬を用いることもあります。

治療ステップ 4

高用量の吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬に加え、長時間作用性抗コリン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤の複数を併用します。これらの薬を可能な限り使用しても症状が改善されない場合は、抗体医薬を使うか、気管支熱形成術を検討します。

4つの治療ステップ

4つの治療ステップ4つの治療ステップ

一般社団法人日本アレルギー学会 喘息ガイドライン専門部会監修:喘息予防・管理ガイドライン2021,協和企画,2021

LABA:長時間作用性β2刺激薬、LAMA:長時間作用性抗コリン薬、LTRA:ロイコトリエン受容体拮抗薬、SABA:短時間作用性吸入β2刺激薬、抗IL-5Rα抗体:抗IL-5受容体α鎖抗体、抗IL-4Rα抗体:抗IL-4受容体α鎖抗体

治療ステップの決め方

喘息の重症度は、1週間に起こる喘息症状(咳や痰、ぜん鳴、呼吸困難など)、発作の回数、発作の強度、夜間の症状、睡眠や生活に対する影響などを目安にして判断します1)2)

〈まだ治療を行っていない患者さんの場合〉
重症度の見分け方

未治療患者さんでの重症度の見分け方未治療患者さんでの重症度の見分け方

一般社団法人日本アレルギー学会 喘息ガイドライン専門部会監修:喘息予防・管理ガイドライン2021,協和企画,2021

現在の治療によって症状がきちんとコントロールできているかどうか、3ヵ月を目安に定期的に効果を確認し、治療ステップを見直します。コントロールの状態は、喘息の症状や発作治療薬の使用回数、呼吸機能の状態などによって3段階で評価します。
コントロールが「良好」な場合、そのままの治療ステップを継続するか1段階ステップダウンします。反対に「不十分」であれば、治療ステップを1段階アップして治療を強化し、「不良」であれば2段階アップします。

喘息のコントロール状態の評価

6つの項目において、それぞれ3段階で評価します。

喘息のコントロール状態の評価
喘息のコントロール状態の評価喘息のコントロール状態の評価

一般社団法人日本アレルギー学会 喘息ガイドライン専門部会監修:喘息予防・管理ガイドライン2021,協和企画,2021

※1:1日2回測定による日内変動の正常上限は8%である1)
※2:増悪が月に1回以上あれば、他の項目が該当しなくてもコントロール不良と評価する。

ステップアップとステップダウン

現在の治療ステップで症状を十分にコントロールできない場合は、ステップを1~2段階上げることを検討します。逆に症状がない状態が続けば、ステップを1段階下げることもできます1)

ステップアップする場合

喘息治療では、現在のステップでの治療結果を定期的に評価し、症状をコントロールできているか判定します。一般的には、治療開始から1ヵ月以内に、次の内容に従って評価します1)

  • 症状や増悪治療薬の使用
  • 呼吸機能
  • 増悪の頻度
  • 薬を吸入・服薬
    できているか
  • 治療薬による副作用
  • 治療に対する患者さんの
    理解や満足度

コントロールの状態が「良好」でなければ、喘息症状が毎週ではない場合は、同じ治療ステップで薬の量や種類を増やします。症状が毎週あるいは毎日あらわれる「コントロール不十分」または「コントロール不良」の場合、治療ステップを1段階または2段階上げます。ステップアップすることで、現在よりも症状の改善が期待できます。

治療ステップが上がるイメージ

ステップダウンする場合

喘息のコントロールが「良好」な状態が3~6ヵ月持続し、呼吸機能の検査結果も安定している場合は、コントロール状態が低下しない範囲内で治療のステップダウンを検討します1)。ステップダウンの方法や時期は、医師が患者さん一人ひとりの症状や発作の原因などによって慎重に決定します。薬は自己判断でやめたり減らしたりしないようにしましょう。

治療ステップが下がるイメージ

あなたの治療ステップは?

自分の治療ステップを知りたい時は、医師にたずねるのが良いでしょう。
現在使用している吸入薬の種類や量、飲み薬や注射薬の種類などでもある程度は判断することができます。

【出典】
1)一般社団法人日本アレルギー学会 喘息ガイドライン専門部会監修:喘息予防・管理ガイドライン2021,協和企画,2021
2)足立満 著:ウルトラ図解 ぜんそく,法研,2015

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